私たちの生活に欠かせないライフラインの一つであるガス。LPガス、プロパンガス、都市ガスなど、さまざまな名前を聞くことがありますが、それぞれの違いについてはあまり知られていないことが多いです。
今回は、LPガス(プロパンガス)と都市ガスの違いや、それぞれの特徴、メリット・デメリットについて詳しく解説します。特にLPガスの料金設定についても触れていきますので、新しいガス契約を検討している方はぜひ参考にしてください。
LPガスの基礎知識
まずは、LPガスについての基本的な知識を学びましょう。LPガスとはどんなガスで、他のガスとどう違うのでしょうか?
LPガスとは
LPガスの正式名称は「Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)」で、プロパンやブタンなどの気体燃料を液化したものを指します。LPGとも略されます。液化することで体積が小さくなり、輸送が容易になるという特徴があります。
家庭でよく見かけるLPガスの使用例には、100円ライターやカセットガスコンロの燃料などがあります。これらには液化ブタンが使用されています。また、給湯器やコンロ、タクシーの燃料、火力発電の燃料など、多岐にわたる用途で利用されています。
LPガスとプロパンガスは同じ
LPガスとプロパンガスという名前が異なるため混同されがちですが、実際にはどちらも液化石油ガスを指します。LPガスにはプロパンとブタンが主成分として含まれており、家庭用のLPガスにはプロパンが多く含まれているため、プロパンガスとも呼ばれます。
一方、工業用のLPガスにはブタンが多く含まれており、ブタンガスとも呼ばれます。
LPガスと都市ガスの違い
家庭で使用されるガスとして一般的なLPガスと都市ガスには、成分や配給方法に明確な違いがあります。LPガスはプロパンやブタンを主成分とする液化石油ガスであるのに対し、都市ガスはメタンを主成分とする液化天然ガス(LNG)です。
都市ガスは、植物や動物の堆積物が長い年月をかけて生成されたもので、主に地下の岩石から採掘されます。一方、LPガスは油田や天然ガス田から採取されます。
LPガスの特徴
LPガスの特徴について詳しく見ていきましょう。プロパンとブタンという成分を持つLPガスには、どのような特性があるのでしょうか?
発熱量の高さ
LPガスの大きな特徴は、その高い発熱量です。例えば、都市ガスの発熱量が10,750Kcal/立方メートルであるのに対し、LPガスは24,000Kcal/立方メートルです。これにより、少ない量で効率よく熱を得ることができます。
どの地域でも使える利便性
LPガスはガスボンベと設備さえあれば、都市ガスが届かない地域でも使用可能です。配管工事が不要で、地方や過疎地でも導入しやすいのが魅力です。
災害時の強さ
災害時に強いのもLPガスの特徴です。都市ガスは地下配管を通じて供給されるため、地震などで配管が破損すると復旧に時間がかかりますが、LPガスはボンベから直接供給されるため、迅速な復旧が可能です。
環境への配慮
LPガスは燃焼時に排出されるCO₂が少なく、硫黄分や窒素酸化物も含まれていないため、環境に優しいクリーンエネルギーとされています。
LPガスのメリットとデメリット
LPガスにはさまざまなメリットがある一方で、デメリットも存在します。ここでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
LPガスのメリット
- 発熱量の高さ:同じ火力でも少ない量で済むため、効率的に熱を利用できます。
- 地域を問わず利用可能:ガスボンベと設備があれば、どの地域でも使用できます。
- 災害時の復旧が早い:災害時でも迅速に供給が再開されるため、安心です。
- 環境に優しい:燃焼時のCO₂排出量が少なく、有害物質もほとんど含まれません。
LPガスのデメリット
- 料金が高い:配送管理にかかるコストや価格の自由設定が理由で、都市ガスよりも高くなりがちです。
- 集合住宅での導入費用:マンションやアパートでは、導入費用や維持費が入居者のガス料金に反映されることがあります。
LPガスと都市ガスの料金比較
ここでは、2021年6月時点の東京におけるLPガスと都市ガスの料金を比較してみましょう。
ガス種別 | 5立方メートル相当 | 10立方メートル相当 | 20立方メートル相当 |
---|---|---|---|
都市ガス | 759.00円 | 1,518.85円 | 3,037.70円 |
LPガス | 1,752円 | 4,422円 | 7,041円 |
料金設定の違い
都市ガスとLPガスでは、料金設定の仕組みも異なります。
都市ガスの料金設定
都市ガスの料金は、2017年まで「総括原価方式」という方式が採用されていましたが、ガスの小売自由化により、各会社が自由に料金を設定できるようになりました。競争が生まれることで、料金の低下や新たなサービスの提供が期待されています。
LPガスの料金設定
LPガスは以前から自由料金制が採用されており、販売会社ごとに価格設定が異なります。一般的には、基本料金に使用量と従量単価を掛け合わせた金額が請求されます。
LPガスの料金体系
LPガスの料金は、二部料金制と三部料金制に分かれます。
二部料金制
基本料金と使用量に応じた従量料金から構成されます。基本料金には、検診費や保安費、容器や設備費が含まれますが、従量料金は使用量に応じて変動します。
三部料金制
基本料金、従量料金に加えて設備使用料が含まれる料金設定です。利用者にとっては料金の内訳が明確でわかりやすいというメリットがあります。
従量料金の種類
二部料金制と三部料金制は、従量料金の計算方法によりさらに細分化されます。
スライド型
使用量に応じて単価が変動する仕組みです。使用量が多いほど単価が安くなるのが一般的です。
原料費調整型
LPガスの原料価格に応じて従量料金が変動するシステムです。原油価格や為替レートが反映されるため、透明性が高いとされています。
豆知識
ここからは関連する情報を豆知識としてご紹介します。
・LPガスの歴史は、1910年代にドイツでプロパンガスが発見されたことに始まります。アメリカでは1920年代に商業化されました。
・都市ガスの成分であるメタンは、温室効果ガスの一つであり、CO₂よりも温室効果が約25倍高いとされています。
・日本では、LPガスの主な供給源は中東地域で、特にサウジアラビアとカタールが主要な輸出国です。
・都市ガスは、古くは石炭を原料として製造されていましたが、現在では主に液化天然ガス(LNG)が利用されています。
・LPガスのボンベには、ガス漏れ防止のために「オートガスバルブ」という安全装置が標準装備されています。
・LPガスの燃焼時には、炭酸ガス(CO₂)と水蒸気(H₂O)が主に生成されるため、屋外での使用には換気が重要です。
・日本国内では、LPガスの普及率は全国平均で約50%となっており、特に地方での利用が高いです。
・都市ガスの配管は、耐震性を高めるために弾力性のある素材が使用されており、地震による破損を防ぐ工夫がされています。
・LPガスは、キャンプやアウトドア活動でも多く利用されており、ポータブルガスストーブやバーナーの燃料として人気です。
・都市ガスとLPガスの消費量は、使用する機器や環境によって異なり、特に暖房用のガスファンヒーターではLPガスの方がコスト高となる場合が多いです。
・LPガスの価格は、地域や販売業者によって大きく異なるため、引越しや新規契約の際には複数の業者から見積もりを取ることが推奨されます。
・都市ガスの使用量は、季節変動があり、特に冬季に暖房需要が高まるため、年間を通じた消費量の管理が重要です。
・LPガスの供給には、ガスボンベの交換が必要で、定期的な交換サービスが提供されています。また、緊急時には予備ボンベを備えておくことが推奨されます。
・都市ガスは、ガス管の老朽化対策として、定期的な点検や更新工事が行われており、安全性が確保されています。
・LPガスのガス漏れ警報器は、一般的に床近くに設置されるため、設置場所に注意が必要です。一方、都市ガスの警報器は天井付近に設置されます。
おわりに
以上、LPガスと都市ガスの特徴とその違いについてご説明しました。これらのガスはそれぞれに異なる特性と利点を持ち、私たちの日常生活に欠かせない存在です。
LPガスはその高い発熱量や災害時の強さから、多くの家庭や業務で利用されていますが、料金の自由設定によるコストの高さがデメリットとなることがあります。
一方、都市ガスは広範な供給網と安定した料金設定が魅力ですが、災害時の復旧が遅れる可能性があります。
ガスの選択にあたっては、各ガスの特性や自身の生活スタイル、地域の供給状況をよく考慮することが重要です。特に新しいガス契約を検討している方にとって、この記事が有益な情報となり、最適な選択をする一助となれば幸いです。
今後も安全で効率的なガス利用を心掛け、快適な生活を送りましょう。
コメント